わたしたちは北海道を舞台に、ボランティア活動でつながる広域交流にとりくんでいます。
道内における雪害による死傷者は、近年増加傾向にある。2013 年度冬期、10年間ではじめて500人を上回りました。
事故原因の6割強は、屋根からの転落や落雪、はしごからの転落といった屋根雪に起因し、死傷者の約7 割が65 歳以上の高齢者が占めます。
これらの背景には、道内において屋根雪下ろしの技術(命綱の張り方やはしごの登り方)が確立されていないだけではなく、
少子高齢過疎化により、家庭内における雪下ろしの担い手の世代交代が滞り、高齢者が依然と屋根雪下ろしを行わざるを得ない社会的背景が働いていると考えられます。
2013年および14年厳冬期、「ボランティア活動による広域交流イノベーション推進研究会」(以下、「推進研究会」、事務局(一社)北海道開発技術センター)を主催に、道内5 地域9 回に渡る「雪はねボランティアツアー」を企画し、延べ300 人程度札幌市民を道内各地の豪雪地域へと派遣しました。
安全管理上、屋根の雪下ろしを厳禁とした除雪支援では、上述のような高齢者のニーズを満たすことができません。
そのため、屋根の雪下ろしを展開できないもどかしさを感じる局面も多々ありました。
居住者の最大のニーズである屋根雪下ろしをボランティアによって展開するには、命綱の張り方などの技術的側面や高所作業中の事故対応(救命処置や事故賠償)における法規的側面での問題などがまず想定されますが、それらの課題の整理も充分に行われていないのが現状です。
このような屋根雪下ろしの現状を改善するためにも、地域内や広域的な共助による支援も選択肢のひとつとして検討していくことが必要であると考え、平成26年度)北海道新聞社会福祉振興基金から助成をいただき、本事業を展開いたしました。
本事業では、以下の取り組みを実施し、屋根雪下ろし事故を軽減させる社会的基盤を構築していくことを目的といたします。
① 屋根雪下ろしボランティアチーム設立に向けた検討会の設置と開催
② 屋根雪下ろしボランティアチームの創設と育成
なお、本事業はあくまでも個人や業者による一般的な屋根雪下ろしの技術を確立させる方策を検討する事業ではなく、ボランティアによる屋根雪下ろしの技術や法規的課題を総合的に検討する事業です。
本事業では、以下の取り組みを実施したしました。
●検討会メンバー
原 文宏 (一社)北海道開発技術センター
中前 千佳 (一社)北海道開発技術センター
堤 拓哉 北海道立総合研究機構北方建築総合研究所
金田 安弘 ウィンターライフ推進協議会
冨田 真未 ウィンターライフ推進協議会
小西 信義 北海道大学大学院文学研究科
五十嵐 隆浩 株式会社構研エンジニアリング
渡邊 太郎 札幌星空法律事務所
須田 力 北海道大学教育学院(名誉教授)/北方圏体育・スポーツ研究会
野田 竜也 ソリトン・コム株式会社
※第三回屋根雪下ろし検討会については、屋根雪下ろし受講者も検討会に加わっていただいた。
①第一回屋根雪下ろし検討会
【開催日時】2014 年8 月19 日(火)15:00~17:00
【開催場所】(一社)北海道開発技術センター
【議事内容】北海道における屋根雪下ろしに関する現状と課題の整理
②第二回屋根雪下ろし検討会
【開催日時】2014 年10 月29 日(水)14:00~16:00
【開催場所】(一社)北海道開発技術センター
【議事内容】ボランティアによる屋根雪下ろしに関する法的課題の整理
③第三回屋根雪下ろし検討会
【開催日時】2015 年1 月25 日(日)15:00~16:00
【開催場所】北海道立総合研究機構北方建築総合研究所
【議事内容】ボランティアによる屋根雪下ろし活動に関する今後の課題の整理
①第一回屋根雪下ろし講習会
【開催日時】2014 年12 月7 日(土)10:00~17:00
【開催場所】(一社)北海道開発技術センター会議室
【参加人数】11 名
【講師】堤拓哉氏(北海道総合研究機構北方建築総合研究所)
【実施内容】屋根雪下ろし技術に関する座学と救命講習(止血法・心肺蘇生・AED 操作)
②第二回屋根雪下ろし講習会
【開催日時】2015 年1 月24 日(土)15:00~18:00~25 日(日)9:00~15:00
【開催場所】北海道立総合研究機構北方建築総合研究所
【参加人数】17 名(屋根雪下ろしボランティア10 名含む)
【講師】堤拓哉氏(北海道総合研究機構北方建築総合研究所)
【実施内容】屋根雪下ろし技術に関する実践と埋没者救出訓練
①屋根雪下ろし実証実験
【開催日時】2015 年2 月7 日(土)10:00~19:00
【開催場所】岩見沢市美流渡地区
【参加人数】40 名(うち13 名が屋根雪下ろしボランティア)
【講師】上村靖司氏(越後雪かき道場代表/長岡技術科学大学教授)
【実施内容】「雪はねボランティアツアー」にボランティアによる屋根雪下ろしを実装した実証実験(少雪のため、実際の
屋根雪下ろしは、実践未達)と簡易アンカーを用いた命綱講習
本事業の成果の一部として、現時点における屋根雪下ろしボランティアチームの今後の課題を指摘する。
・ ボランティアチームが雪下ろしを作業するには、安全管理上、地上からアンカーをとることが最低条件(雪止め金具を利用したアンカーなどは屋根材を痛める可能性があるので仮設的アンカーとして改善が必要)とし、ボランティア向け屋根雪下ろし技術を再検討する。
・ 屋根雪下ろしボランティアの安全対策の向上
・ 作業手順書(シナオリやチェックシートなど)の作成
・ 屋根雪下ろし技術指導員の確保と養成